手術が予定されたときの糖尿病の方の声
「糖尿病で治療中だけど、手術をうけることになったがどうすればいいんだろう」
「私は糖尿病だけど、手術をうけていいんだろうか」
「糖尿病の方が手術を予定するときの注意点は何ですか?」
ADA(米国糖尿病学会)が2023年12月に発刊した勧告
Standards of Care in Diabetes— 2024(Diabetes Care(47)supplement1,S302,January2024)
を元に作成しました。
糖尿病の方が手術をうけるとき
一般的な外科手術をうけた人の20%以上は糖尿病をもち、糖尿病の前段階の方は23-60%と推定されています。
糖尿病もつ方が手術を必要とする病気や合併症にかかられるのは稀ではないようです。
手術のストレスや拮抗ホルモン(カウンターホルモン)の分泌が
死亡率、感染、入院期間の長さと同様に高血糖のリスクを高めます。(134-136)
周術期とは手術の前、手術中、手術後の一定の期間を指します。
周術期を通して、糖尿病を持つ人の治療の手引に関するデータはほとんど手に入らない状況です。
糖尿病を持つ方のリスクを減らすために、複数の施設からA1cに関して、基準をもうけています。
注意すること
あくまで入院を要するような大きな手術を想定されたものですので、すべてが現実的には当てはまるものではないと思われます。
1.虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)や自律神経障害、腎不全を持つなど、ハイリスクの方では周術期のリスク評価を実施すべきであるとされています。
2.選択された手術に対するヘモグロビンA1cの治療目標は可能な限り、8%未満にすべきである。
3.周術期の血糖値の目標は手術の4時間以内は100-180 mg/dl に、すべきである。
手術の際の血糖のモニターに持続血糖モニターのみを単独で使用すべきではない。
4.糖尿病薬のメトホルミンは手術前後は中止(休薬)すべきである。
5.糖尿病薬のSGLT2阻害薬は手術の3-4日前から中止(休薬)すべきである。
6.他の血糖降下薬は手術の朝、手術に先行して継続する。
そして半分量のNPHインスリンか75-80%量の持効型インスリン(グラルギン、ランタスXR、トレシーバなど)
インスリンポンプの基礎値の設定の調整などを糖尿病のタイプや臨床的な判断に基づき実施する。
7.経口摂取ができないときは、少なくとも2-4時間毎に血糖値を測定する。
必要に応じて、超速効型インスリンを投与する。
8.周術期における血糖や遅延した胃運動に関するGLP-1受容体作動薬の安全な使い方と影響に関してはほとんどデータはない。
9.周術期のより厳しい血糖コントロール目標は勧められない。
80-180mg/dlより、厳しい血糖コントロール目標は、アウトカムを改善しない可能性があるし、低血糖を増やすことに関連する可能性がある。
10.通常の投与量と比べると、手術前の夕方に基礎インスリンを25%減量することが、低血糖のリスクを少なく、周術期の目標血糖を達成しやすいようである。
11.非心臓手術を経験した人では、基礎インスリン+食事前の超速効型インスリン(べーサルボーラス療法)のほうが、
基礎インスリンを使わずに血糖を見て超速効型インスリンで補正するよりも、血糖コントロールは改善し、周術期合併症がより低率となるとされています。
終わりに
手術の緊急度によっては、糖尿病のコントロール状態を気にせずに実施することが優先する場合があります。
日頃から、血糖コントロールを目標範囲内に維持できたら良いとは思われますが
一方で、なかなか目標範囲内に維持できない方もおられて、日頃からの糖尿病との向き合い方が大切になってきます。