はじめに
澤木内科・糖尿病クリニック院長の澤木秀明です。
当院でもインスリンポンプ療法を選択される患者さんや
インスリンポンプ療法の患者さんが転院されてくる
ケースが増えてきました。
その際、インスリンポンプ用のインスリンとして、
フィアスプ注を使われているケースを拝見することがあります。
フィアスプ注自体は使い勝手のよいインスリンで
人気のインスリン製剤のひとつです。
ただ、フィアスプ注をインスリンポンプ用のインスリンとして
使用する場合には注意が必要ですので
今回まとめることにいたしました。
インスリンポンプ療法について
インスリンポンプ療法は体外に装着したインスリンポンプと専用の注入回路を用いて、
インスリンを持続的に皮下注入する治療法です。
主に1型糖尿病の患者さんに用いられています。
インスリンポンプ療法はCSII(Continuous subcutaneous insulin infusion)ともよばれます。
インスリンポンプは電池で駆動する小型のシリンジポンプで、内蔵のコンピューターに基礎注入速度をあらかじめ
プログラムすることにより、時間ごとの基礎注入を自動的に変えることができます。
また、基礎注入を一時的に変更することも可能で、運動時の低血糖予防などにも便利です。
食事の際に、必要となる追加注入についても、ボタン操作のみで簡単に実行できるのが
インスリンポンプ療法の利点のひとつです。
人の目が気になるので、人前でインスリンがうてず困っている方では、いちいち注射をする必要がないのでインスリンポンプの追加注入は役立ちます。
インスリンをこまめにうつような注射回数の多い方もその度に注射しなくてもいいので、インスリンポンプの利点のひとつとなります。
インスリンポンプ療法の際に用いる超速効型インスリンについて
ノボラピッド(インスリンアスパルト)、
フィアスプ(インスリンアスパルト)、
ヒューマログ(インスリンリスプロ)、
ルムジェブ(インスリンリスプロ)、
アピドラ(インスリングリルジン)が
超速効型インスリンに分類されます。
同じインスリンなのに添加物が工夫されて、
ノボラピッドやヒューマログと比べると
早く効果を発揮するフィアスプやルムジェブは
食事開始前の2分前から食事開始から20分以内に
注射すると添付文書にあります。
インスリンポンプ用の超速効型インスリン製剤の選択には注意が必要です。
フィアスプ注をインスリンポンプ用のインスリンとして使用する場合の注意事項について
フィアスプ注使用時に、インスリンポンプにセットされた注射液にゲル化がみられ、重篤な
高血糖に至った事例が1例報告されています。
2022年3月に「フィアスプ注 インスリンポンプでの適正使用のお願い」
の注意喚起がだされています。
注意喚起以降、同年12月31日までに国内でフィアスプ®注バイアル
製剤の注射液にゲル化がみられたという事例は2例(いずれも高血糖発現あり(非重篤))報告されてい
ます。
・37℃を超える高温を避ける
・リザーバーに充填されたインスリンは6日以内に交換
・こまめにインスリンがゲル化していないか、沈殿物がないか、確認する
などが必要と注意喚起(詳細はこちら)されています。
インスリンポンプが詰まるとインスリンが体に入ってこなくなるので
糖尿病ケトアシドーシスなどの重篤な状態を予防するために
回路の交換やペン型インスリン注射を用いるなど
対応が必要になります。
※プレフィルド型やカートリッジ型は該当しません。
現在、フィアスプ注をインスリンポンプに使用されている方への当院の提案について
インスリンポンプ療法の際に、超速効型インスリンを活用する場面が多いです。
超速効型インスリンを選ぶ際に、特徴を考えて患者さんに提案しています。
フィアスプを希望される場合は、しっかりゲル化に注意しながら、フィアスプを使用し、ゲル化を発見した場合は回路を交換する。
効果発現の速い超速効型インスリンを希望される場合はルムジェブを使用する。
インスリンアスパルトが良い場合は、フィアスプ以外のインスリンアスパルト(ノボラピッドなど)を使用する。
少しでも薬剤の値段を下げることを希望される場合は、バイオシミラーを提案し、
患者さんに選ぶようにしていただいております。