■インスリンの1単位とは?

インスリン量は歴史的なけいいにより重量(おもさ)ではなく、

生物学的力価(単位)で表現されています。

1921年にトロント大学のBanting,Best,Collip,Macleodらによってイヌのすい臓からインスリンがとりだされました(文献1)。

翌1922年、Collip(文献2)らにより、

インスリン1単位は約2kgの24時間絶食状態のウサギの血糖を3時間以内にけいれんレベル(血糖約45mg/dl)にまで下げうる量

と設定(ウサギ血糖降下法)されました。

ずいぶん、かわいそうですが、歴史的には、このように決められていました。

1923年国際連盟保健機構の標準化委員会で定義されました。(文献3)

1924年に各国より約60gのインスリン粉末が集められ約100mgに小分けされ乾燥した状態で,いくつかの研究室で活性を検定されたところ,1mgあたり8.4~8.8単位と出ました.

1925年に初めてインスリンの国際標準品が作成され,1mgを8単位と定義しなおされました.

インスリンの精製技術の進歩によりインスリン国際標準品1mgは,1935年には22単位,1952年には24.5単位,1958年には24単位と変更されました.

1987年にはブタ,ウシ,ヒトのインスリンそれぞれについて別々に国際標準品が作られました.

ヒトインスリンの標準品としてはNovo社の半合成ヒトインスリンが採用されました.

ヒトとブタのインスリン標準品では1mgあたり26単位,ウシインスリンは25.7単位とされました.

古い時代のインスリンに比べ1mgあたりの単位数はかなり高くなり,インスリンの単位は重量で決めることが出来るようになりました。現在では日本薬局方ではインスリンは換算した乾燥物に対して1mgあたり26単位以上を含むと規定されています。

 

■ワンポイントアドバイス

現在ではすべてのインスリンがすい臓より抽出されたものではなく、生合成インスリンであり、極めて純度が高くなっています。μU/mlで示されているインスリン濃度に変換係数である6をかけますとpmol/lの表示となります。

 

 

 

 

文献

1)Banting F.G, Best C.H.: The internal secretion of the pancreas. J Lab Clin Med 7:256-271,19222

2)Banting F.G, Best C.H., Collip J.B., et al.: The effect of pancreatic extract (insulin) on normal rabbits. Am J Physiol 43:162-176,1922

3)葛谷健(編):インスリン-分子メカニズムから臨床へ.第1刷,講談社,東京都,pp182-184,1996